「シェアード・ディシジョンメイキング」~OTと患者さんの受け取り方の違いがある~
出典:https://www.ibd.care/care-navigator/shared-decision-making
シェアード・ディシジョンメイキング(SDM)」って言葉ご存知でしょうか?
「患者中心の意思決定方法」の一手段である「セラピストと患者が一緒に決める協働的意思決定方法」です。
従来は医療従事者任せで、セラピストが患者にとって良いと思われる治療を一方通行で施すことが一般的でした。現在、「患者の知る権利」への意識が高まっていること、医療も医療サービスという概念が高まっていることから「患者中心の医療を提供する」方向になりつつあります。
「シェアード・ディシジョンメイキング」を初めて聞いたとき、理想的な目標設定方法だと思いましたが、実際に行っている米国での研究で、OTと患者感で認識のズレがあること、医療施設や年齢、性別によって必要性に対する認識や障壁の度合いがことなることがわかりました。
作業療法士の認識は、
- ゴール設定は患者さんと一緒に設定することが望ましいと考えている(90.9%)
- 患者中心の医療をきちんと説明している(100%)
- プロセス参加について教えている(81.8%)
- 治療選択(90.9%)やゴール設定を一緒に考えている(81.8%)
- OTと患者の認識の違いについて
- 治療ゴールに向かっている(90.9%)
ところが、
患者の認識は
との認識のズレがあることがわかりました。
- 目標設定の認識
- 30人中13人がすべての目標を述べることができた。
- 30人中10人が半分以上の目標を述べることができた。
- 30人中6人が4分の1以下の目標しか述べることができなかった。
興味深いことに目標設定の認識については、設定作業に参加していない患者でも76.6%が半分以上を知っていた。
- 「患者中心の医療」が実践をする上での障壁
- 認知機能が低下しているクライエント
- 目標設定に貢献する意欲がなく、セラピストに期待しているクライエント
- 施設の生産性が低下しているクライエント
- 自分の懸念を言語化できないクライエント
- クライエントの個人的な目標が医療的治療の焦点とずれている場合
- クライエントが無関心で自立するためにやる気がないこと
入院施設の作業療法士は、患者を中心とした実践を行わない傾向が最も強く、またその試みが最も困難である傾向があった。
患者の能力の無さに基づいて、目標設定プロセスに参加することができない、または治療過程で積極的な役割を果たすことを望まない患者を一貫して扱う入院中の作業療法士は、患者中心の実践を頻繁に使用することはないと考えるようである。
- すべてのクライアントが目標設定への参加に対し重要とは思っていない
- 参加することが非常に重要である60%
- やや重要である13.3%
- 全く重要ではない26.7%
- なぜ全く重要でないと思うのか
患者中心の目標設定作業が重要ではないと捉えている方も中にはおられる。
理由としては
- 「自分が何をすべきかOTに教えてもらいたい」
- 「今の私には多すぎる」
- 「OTが何をすべきか教えてくれるから、そのために訓練されている」
- 「必要ないとは思わないが、彼らは何をしているか知っている」
といった理由が挙げられOTに何をすべきか委ねたいと思っていると思われた。
- 高齢者は目標設定プロセスへの参加が少ない
目標設定プロセスに参加した多くの患者は、参加しなかった患者に比べて平均年齢が30歳若かった。
- 治療環境や性別・年齢によって左右される可能性
・介護施設の利用者は全員女性であり、目標設定プロセスへの参加は最も少なかったが、目標については最も知識があり、作業療法治療に対する満足度と利益が最も高かった。
・長期療養施設やリハビリテーション施設は高齢の利用者が多い。利用者の85%以上が目標設定プロセスに参加することが「非常に重要」であると回答。
・外来患者の90%近くが目標設定プロセスに参加していると回答。これらの患者は最も若い患者であり、その大半は男性であった。
最後に「このギャップは、セラピストとクライエントが「クライアント中心の実践アプローチ」における自分の役割を十分に理解していない結果として生じる可能性がある。この結果を踏まえて、作業療法士がクライアントが治療過程で果たしたい役割を引き出すための体系的な戦略を開発することは、作業療法士とクライアントがクライアント中心の実践の中で役割を果たすことができるようにするための効果的な介入であるかもしれない。」と結論づけている。